「クラウドワークス減益=AIで副業終了?」決算で検証したら“原因”は別だった

「クラウドワークスの利益が9割も減った」「株価が急落している、もう副業サイトはオワコンなのか」──。2025年2月中旬、SNSのタイムラインにはそんな不穏な言葉が並びました。生成AIの台頭によって単純作業が奪われ、フリーランスや副業ワーカーの仕事が消滅した結果だと危惧する声も少なくありません。

しかし、株式市場で公開されている一次情報を冷静に読み解くと、その「絶望的なストーリー」とは少し異なる事実が見えてきます。話題となっているクラウドワークスの2026年9月期第1四半期決算。この数字が本当に意味しているものは何なのか。感情論ではなく、会計上の事実ベースで何が起きているのかを検証します。

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Xで拡散「クラウドワークス減益=AIで副業終了?」…まず結論だけ言う

SNS上では、大幅な減益というインパクトのある数字だけが独り歩きし、「AIによる仕事の消滅」と安易に結びつけられています。しかし、決算書の中身を精査すれば、その因果関係が単純なものではないことがすぐに分かります。まずは、この騒動に対する結論から整理しておきましょう。

今回の“減益の直接原因”はAIではなく「先行投資+一時費用」が濃厚

結論から言えば、今回の決算で利益が大きく減った主たる原因は、AIに仕事を奪われたからではなく、会社側が意図的にコストをかけたことにあります。具体的には、将来の成長を見据えた人材採用の加速と、オフィスの移転に伴う一時的な費用の発生です。

クラウドワークス社は現在、単なる仕事のマッチングだけでなく、より単価の高いDX(デジタルトランスフォーメーション)コンサルティングなどの領域へ事業を広げようとしています。そのために必要な専門人材を積極的に採用したり、教育したりするための「人件費」が膨らんだのです。さらに、物理的なオフィスの移転費用もこのタイミングで重なりました。つまり、売上が消えて貧乏になったのではなく、将来もっと稼ぐために手元の利益を削って「改装工事」を行っている状態に近いと言えます。

ただし「AI影響がゼロ」とも断定できない(見るべきKPIが別にある)

一方で、「AIの影響は全くない」と言い切るのも早計です。利益が減った直接のトリガーは投資コストですが、そもそも「売上の伸び」が鈍化している背景には、AIによる市場の変化が潜んでいる可能性があるからです。

これまでクラウドワークスを支えてきたライティングやデータ入力といった「低単価・単純作業」の領域は、生成AIの普及によって発注数が減ったり、単価が下がったりしている恐れがあります。もしAIの影響を正しく測るなら、全体の「利益」を見るのではなく、もっと細かい指標である「平均顧客単価」や「カテゴリー別の契約金額」の変化を追う必要があります。今回の決算は、AIによる即死を示すものではありませんが、市場環境が静かに、しかし確実に変わり始めているサインであることは間違いありません。

数字は嘘をつかない。まず1Q決算の“事実”を30秒で把握する

投資家や経営者は、ニュースの見出しではなく「決算短信」と呼ばれる一次資料の数字を見て判断を下します。今回のクラウドワークスの決算(2026年9月期 第1四半期)において、見るべき数字は非常にシンプルです。ここを押さえるだけで、事態の正確な把握が可能になります。

売上はほぼ横ばい、利益だけが崩れた(ここが最大のポイント)

最も注目すべき事実は、会社の稼ぐ力を示す「売上高」が崩れていないという点です。今回の発表では、売上高は55億6,000万円で、前年の同じ時期と比べてマイナス1.0%という結果でした。ほぼ横ばい、あるいは微減というレベルです。

もし噂されているように「AIが仕事を根こそぎ奪い、発注そのものが消滅した」のであれば、売上高はもっと劇的に、例えば20%や30%といった単位で減少していなければ計算が合いません。売上がほとんど変わっていないにもかかわらず、本業の儲けを示す「営業利益」が前年比84.4%減の5,400万円まで落ち込んだということは、入ってくるお金が減ったのではなく、出ていくお金(経費)が急激に増えたことを意味します。この「売上は維持、利益は激減」という構造こそが、今回の騒動を読み解く最大の鍵となります。

「会社が危ない」型の減益と「投資期」型の減益は見分けられる

企業の決算において「減益(利益が減ること)」には、大きく分けて二つのパターンがあります。一つは、商品やサービスが売れなくなって売上が落ち、その結果として利益も減ってしまう「衰退型」の減益です。これは企業にとって非常に危険なシグナルです。

もう一つは、売上は維持あるいは成長しているものの、さらなる拡大を目指して広告宣伝や設備、人材に多額のお金を使った結果、一時的に利益が減る「投資型」の減益です。今回のクラウドワークスのケースは、売上高が大きく毀損していない点や、会社側が事前に「投資フェーズに入る」と公表していた経緯(※1)を踏まえると、典型的な「投資型」の動きであると判断できます。もちろん、その投資が将来ちゃんと回収できるかは別の議論が必要ですが、少なくとも現時点で「仕事がなくなって経営危機に陥っている」と判断するのは、数字の読み方を間違えていると言えるでしょう。

「AIに仕事を奪われた」は本当?断定する前にチェックすべき3つの前提

「AIに仕事を奪われたから、クラウドワークスの業績が悪化した」という説は、一見すると筋が通っているように思えます。しかし、経済の仕組みや企業の決算書を読み解くプロの視点では、この結論に飛びつく前に確認すべき重要な前提条件がいくつか存在します。AIの影響は、私たちが直感的にイメージするような単純な形では現れません。

AI侵食が本当に主因なら、最初に壊れるのは“売上”とは限らない

多くの人は、AIが普及すれば人間の仕事がなくなり、その結果としてすぐに企業の売上が激減すると考えがちです。しかし、実際にはもう少し複雑なプロセスをたどります。AIの影響が深刻化する場合でも、初期段階では売上高(トップライン)が維持されることがあります。

例えば、単純なライティング案件がAIに置き換わったとしても、その分だけエンジニアやコンサルタントといった高単価な案件が増えていれば、全体の売上金額は変わりません。あるいは、AIを活用して大量のコンテンツを安く作る発注が増えることで、単価は下がっても数は増え、結果的に売上の総額はプラスマイナスゼロになることもあり得ます。つまり、「売上が減っていないからAIの影響はない」と安心することもできませんし、逆に「売上が減っていないからAI原因説は嘘だ」と断定するのも早計なのです。売上高という大きな数字は、水面下の変化を隠してしまうことがあります。

先に出やすいのは「単価」「粗利」「案件ミックス」の変化

では、AIによる浸食はどこに現れるのでしょうか。それは売上の総額よりも先に、一つひとつの仕事の質や中身に現れます。具体的には「契約単価の下落」や「粗利率の悪化」、そして「どのような仕事が発注されているか(案件ミックス)」の変化です。

AIは「安くて早い」ことが最大の武器です。これまで人間が1件5,000円で請け負っていた記事作成を、AIがタダ同然でこなせるようになれば、発注者は人間に5,000円を払わなくなります。すると、クラウドワークスのようなプラットフォーム上では、平均契約単価が下がり始めます。また、高単価な仕事と低単価な仕事の割合(案件ミックス)も変わってきます。誰でもできる仕事の価値が暴落し、人間ならではの複雑な仕事の比重が高まらなければ、プラットフォーム全体の稼ぐ効率(粗利率)はじわじわと下がっていくはずです。こうした「質の変化」こそが、AI時代の真の脅威のサインとなります。

だから“決算資料のどこを見るか”が勝負になる

こうした変化を見逃さないためには、ニュースの見出しになっている「売上」や「利益」の数字だけを見ていてはいけません。決算短信と一緒に発表される「決算説明資料」の中にある、より細かいデータにこそ真実が隠されています。

具体的には、発注された仕事の総額を示す「GMV(流通取引総額)」の推移や、登録しているワーカー一人当たりの報酬額、さらにはカテゴリ別の発注状況などを確認する必要があります。もし売上が横ばいでも、GMVが大きく下がっていたり、特定のカテゴリの単価が急落していたりすれば、それはAIの影響が出始めている証拠かもしれません。逆に言えば、そこまで見なければ「AIのせいだ」と断定することは誰にもできないのです。

会社の説明はこう言っている——利益が飛んだ理由は「コストの急増」

AIの影響についての可能性を探ったところで、一度会社側の公式発表に立ち返ってみましょう。クラウドワークス社は、今回の減益の理由を明確に説明しています。それは「仕事が減ったから」ではなく、「意図的にコストを増やしたから」というものです。企業経営において、利益は「売上」から「費用(コスト)」を引いた残りの数字です。売上が変わらなくても、費用が増えれば利益は当然ながら減ります。

採用・教育費が膨らむと、利益は簡単に蒸発する

今回の決算で特に大きく膨らんだコストの一つが「人件費」です。クラウドワークスは現在、従来のマッチングビジネスから脱却し、より高度なDXコンサルティングなどを行える専門家集団へと変貌しようとしています。

プロフェッショナルな人材を採用するには、当然ながら高い給料が必要です。さらに、採用した人材がすぐに戦力になるとは限らず、教育や研修にも多額の費用がかかります。こうした「人への投資」は、将来の売上を作るための種まきですが、決算書の上では単なる「費用の増加」として計上されます。売上がまだ伸びていない段階で、先行して優秀な人材を大量に採用すれば、手元に残る利益が一時的に蒸発してしまうのは、成長を目指す企業にはよくある現象です。これを「経営の失敗」と見るか「攻めの投資」と見るかで、評価は180度変わります。

移転などの“一時費用”は、数字を一段悪く見せやすい

さらに今回の決算には、特殊な事情も重なっています。それが本社の移転に伴う費用です。オフィスの引っ越しには、新しいオフィスの敷金や礼金、内装工事費、古いオフィスの原状回復費など、億単位のお金が一気にかかることがあります。

こうした費用は、毎月発生するものではなく、そのタイミングで一度だけ発生する「一時費用」です。決算の数字を見る際、この一時的な出費が含まれているかどうかを確認することは非常に重要です。もし利益が激減していても、その理由の半分が引っ越し代であれば、次の決算期には費用がなくなり、利益がV字回復する可能性が高いからです。今回の大幅減益には、こうした「今年だけの特別な出費」が大きく影響しており、実力以上に数字を悪く見せている側面があります。

ここまでの時点で「AIが原因で減益」とは言い切れない

以上のことから、今回のクラウドワークスの減益を「AIに仕事を奪われた結果」と結論づけるのは、論理的に無理があります。売上が維持されている点、そして減益の主因が明確に「人材投資」と「オフィス移転」というコスト増加にある点を確認すれば、AI脅威論はあくまで憶測の域を出ません。

もちろん、だからといってAIの影響が全くないとは言えませんが、少なくとも決算書の数字が語っているのは「AIによる破壊」ではなく、「会社が自らお金を使って変化しようとしている姿」です。事実と感情を切り分け、コストの中身を冷静に分析することが、正しい現状認識への第一歩となります。

ここからが本題。「AI侵食説 vs 構造改革説」を決算資料で判定するチェックリスト

ここまでで、今回の減益が単なる「AIによる仕事の消滅」ではない可能性が高いことは理解できたと思います。しかし、だからといって「AIの影響は全くない」と安心するのも危険です。では、私たちは何を基準に「AIの脅威」と「会社の成長痛」を見分ければよいのでしょうか。

感情論やSNSの噂に流されず、事実を見極めるためには、決算資料の「中身」を3つの視点でチェックする必要があります。ここからは、プロの投資家が実際に行っている分析の手順を、わかりやすいチェックリスト形式で解説します。

判定① 需要(トップライン):GMV・売上の“源泉”が痩せてないか

最初に確認すべきは、会社の活力の源である「需要」の強さです。クラウドワークスのようなプラットフォーム企業において、最も重要な指標の一つが「GMV(契約総額)」です。これは、そのサービスを通じてどれだけの金額の仕事がやり取りされたかを示す数字で、いわば経済圏の規模そのものです。

もし「AI侵食シナリオ」が現実のものとなっているなら、このGMVが明確に減少し始めるはずです。AIが仕事を奪えば発注が減り、契約金額の合計は縮小の一途をたどるでしょう。回復の兆しが見えず、ズルズルと数字が下がっているなら、それはプラットフォーム自体が魅力を失っている証拠です。

一方で、会社側が主張する「構造改革シナリオ」が進行している場合は、GMVは横ばい、もしくは微増で推移します。なぜなら、単純作業の仕事が減っても、その分だけ単価の高いDXコンサルティングなどの仕事が増えて穴埋めをするからです。売上の総額が大きく崩れていないか、それとも中身が入れ替わりながら維持されているかを見極めることが、最初の判定ポイントになります。

判定② 収益性(マージン):粗利率が静かに崩れていないか

次に注目するのは、稼ぐ効率を示す「収益性(マージン)」です。ここでは、売上から原価を引いた「売上総利益(粗利)」と、その割合である「粗利率」の変化を追います。売上の金額が同じでも、この粗利率が下がっていると黄色信号が点灯します。

「AI侵食シナリオ」では、AIとの競争に勝つために無理な値下げをしたり、安値競争に巻き込まれたりすることで、この粗利がじわじわと悪化していきます。仕事はあるけれど儲からない、という状態です。これは、サービスの価値が下がっていることを意味し、長期的には非常に危険な兆候です。

対照的に「構造改革シナリオ」がうまくいっていれば、粗利率は維持されるか、あるいは改善に向かいます。人間ならではの高度な判断やコンサルティングといった「高付加価値サービス」は、単純作業よりも高い利益率を確保しやすいからです。もし粗利率がしっかりと下支えされているなら、それはAIに負けない強いビジネスモデルへと転換できている証拠と言えるでしょう。

判定③ コスト(減益の“正体”):販管費が「投資」なのか「防戦」なのか

最後のチェックポイントは、利益を圧迫しているコスト、すなわち「販売費及び一般管理費(販管費)」の中身です。お金を使っている理由が「攻め」なのか「守り」なのかで、未来は大きく変わります。

もしこれが「AI侵食シナリオ」による悪あがきであれば、売上が伸びていないのに「広告宣伝費」だけが異常に膨らんでいるケースが見られます。仕事が来ないからといって必死に広告を打っても、獲得効率が悪化するだけで、利益を無駄に食いつぶす「防戦」のコストになってしまいます。

しかし今回のケースで有力な「構造改革シナリオ」では、コストの増加は主に「人件費」や「採用教育費」に集中します。これは将来、より大きな売上を作るための優秀な人材を確保する「投資」です。また、オフィス移転などの一時的な費用が含まれているかどうかも重要です。未来の成長のために意図的に使われたお金なのか、それとも苦し紛れの出費なのか。コストの内訳を見ることで、その減益が「良い減益」なのか「悪い減益」なのかを判定することができるのです。

今回(2026年9月期 1Q)を当てはめると何が言える?冷静な暫定判定

さて、ここまで見てきた「チェックリスト」を、実際に今回発表されたクラウドワークスの決算(2026年9月期 第1四半期)に当てはめてみましょう。SNSで騒がれているような「AIによる絶望的な未来」なのか、それとも「計算された一時的な後退」なのか。数字から導き出せる、現時点での冷静な判定を下します。

「AIで壊滅」は言い過ぎ。売上は崩れていない

まず第一に、「AIに仕事を奪われて会社が潰れそうだ」という噂は、明確に言い過ぎ(誇張)です。

先ほど確認した通り、会社の体力を示す「売上高」は前年比マイナス1.0%と、ほぼ横ばいを維持しています。もし本当にAIが仕事を根こそぎ奪い、プラットフォームとしての価値が暴落しているなら、売上はもっと派手に、例えば20%や30%といった単位で崩れ落ちているはずです。この「売上が維持されている」という事実は、クラウドワークスという場所にまだ十分な仕事があり、経済圏として機能していることの何よりの証明です。

利益激減は“投資+一時費用”の説明と整合する

次に、衝撃的だった「利益の84%減」についてです。これも、会社側が説明している「将来への投資」と「オフィスの引っ越し代」という理由で、計算がピタリと合います。

決算資料を詳しく見ると、減った利益のほとんどが、新しく採用したDXコンサルタントなどの人件費や、採用活動のための費用、そして移転コストに消えていることが分かります。つまり、儲けが「消えてなくなった」のではなく、「意図的に使い込んだ」のです。これは、家計に例えるなら「給料が減った」のではなく、「将来のために資格学校に通い始め、さらに引っ越しもしたから、今月の貯金が減った」という状態と同じです。これを「貧困化」と呼ぶのは間違いでしょう。

ただし「従来領域の伸び悩み」は無視できない(過渡期のサイン)

とはいえ、手放しで「順調だ」と言えるわけではありません。売上が「横ばい」ということは、裏を返せば「成長が止まっている」とも言えるからです。

これまでクラウドワークスを支えてきた、記事作成やデータ入力といった「従来型の仕事(タスク形式など)」は、明らかに伸び悩んでいます。これは、AIの普及によって簡単な仕事の単価が下がったり、発注自体が減ったりしている影響を無視できません。会社が必死にDX(デジタルトランスフォーメーション)などの新しい領域へ生まれ変わろうとしているのは、このままでは「ジリ貧」になることが分かっているからです。今はまさに、古い稼ぎ方から新しい稼ぎ方へと体を入れ替えている「過渡期(かとき)」の苦しみが、数字に表れていると言えるでしょう。

副業・フリーランスにとっての本当の論点はこれ——「仕事が消える」より「単価が割れる」

決算の分析を通じて、私たち個人が本当に向き合うべき問題が見えてきました。それは「仕事がゼロになる(消滅する)」という恐怖ではなく、「仕事の単価が安くなる(デフレ)」という現実的な痛みです。AI時代において、私たちの仕事はどうなっていくのでしょうか。

危ない領域:単発・低単価・仕様が薄いタスク(AIが得意)

今後、最も厳しくなるのは「誰でもできる仕事」です。 例えば、「テープ起こし」「マニュアル通りのデータ入力」「指示された通りの短い文章作成」などです。これらはAIが最も得意とする領域であり、人間がやると1時間かかることを、AIは数秒で終わらせてしまいます。

発注者からすれば、「AIならタダ同然でできるのに、なぜ人間に数千円も払わなければならないのか?」となります。その結果、仕事そのものは残ったとしても、単価が極端に安く叩かれる「価格破壊」が起きます。これが「単価が割れる」という意味です。

強い領域:要件定義・運用設計・改善提案・成果責任(人間が強い)

一方で、AIには真似できない、むしろ人間への依頼が増える領域もあります。それは「正解のない仕事」や「責任を伴う判断」です。

  • 要件定義: クライアントが何に困っていて、どう解決すべきかを整理する。
  • 改善提案: AIが出してきたアウトプットを見て、「もっとこうすべきだ」と修正・提案する。
  • 成果責任: 「結果に対して責任を持つ」こと(AIは責任を取れません)。

これらは、単に作業をするだけでなく、相手の意図を汲み取ったり、交渉したりするコミュニケーション能力が必要です。AIは「作業員」としては優秀ですが、「パートナー」としてはまだ人間に及びません。

今日からできる“上流化”3ステップ(作業→設計、納品→運用、単価→価値)

では、私たちがAI時代を生き抜くために、具体的にどう動けばいいのでしょうか。キーワードは「上流(じょうりゅう)への移動」です。今の仕事を少しだけレベルアップさせる3つのステップを紹介します。

  1. 作業から設計へ: 言われた記事を書くだけでなく、「どんな記事を書けば読者が集まるか」という構成案(設計図)から提案してみましょう。
  2. 納品から運用へ: Webサイトを作って終わりではなく、「作った後にどうやって更新・管理していくか」という運用までサポートしましょう。
  3. 単価から価値へ: 「1文字1円」という売り方から、「この記事で商品を〇〇個売ります」という価値(成果)での提案に変えてみましょう。

これらはAIには難しい、「人間ならではの付加価値」です。作業の一部をAIに任せて効率化しつつ、空いた時間でこうした「上流」の仕事にシフトすることこそが、単価割れを防ぐ唯一の生存戦略となります。

次の四半期で答えが出る——フォローすべきKPIと“勝ち筋”の見え方

今回の決算発表はあくまで一つの通過点に過ぎません。本当に重要なのは、会社が説明している「投資」が成功するのか、それとも「AIによる侵食」が止まらないのか、その答え合わせが行われるこれからの数ヶ月です。感情論ではなく、冷静に未来を予測するために、次の決算発表(第2四半期以降)で注目すべき数字の変化について解説します。

投資が正しいなら、どの順番で数字が改善するか(採用→稼働→単価→利益)

もし会社側の説明通り、今回の赤字が「将来のための正しい投資」であるならば、数字は決まった順番で改善していくはずです。まずは今回のように「採用コスト」が増えます。次に、採用された優秀な人材たちが現場で働き始めることで「稼働率」や「受注数」が伸びてきます。

その次に来るのが「単価」の上昇です。DXコンサルタントのような専門家が活躍すれば、一件あたりの契約金額が高くなるからです。そして最後に、増えた売上がコストを上回り、「利益」がV字回復します。つまり、次の決算で見るべきは、利益がいきなり戻っているかではなく、その前段階である「受注数」や「契約単価」が上向き始めているかどうかなのです。この兆候が見えれば、投資は成功しつつあると判断できます。

AI侵食が強いなら、どこから崩れるか(単価→粗利→GMV/売上)

一方で、もしAIの影響が想定以上に深刻な場合は、全く別の崩れ方をします。最初に異変が起きるのは「単価」です。AIとの競争に負けて仕事の安売りが始まると、一件あたりの報酬額が目に見えて下がります。

単価が下がれば、当然ながら会社の儲けである「粗利(あらり)」が削られていきます。薄利多売の状態です。そして最終的には、サービスの利用総額である「GMV」や「売上高」そのものが減少に転じます。もし次の決算で、売上高はキープできていても、粗利率がじわじわと下がっているようなら要注意です。それは、AIとの競争によってプラットフォームの体力が奪われている静かな悲鳴かもしれないからです。

情報に踊らされないための“決算の読み方”チェック

ニュースやSNSでは「過去最高!」や「赤字転落!」といった派手な言葉ばかりが踊りますが、賢い人はその裏にあるストーリーを読み解きます。今回のように利益が減ったとしても、それが「攻めの投資」なのか「負け戦の結果」なのかを見極めることが大切です。

チェックすべきは、売上高が伸びているか、コストの中身が将来につながるものか、そして単価が維持されているかの3点です。この視点を持つことは、投資だけでなく、自分自身のキャリアを考える上でも役立ちます。「自分の給料が上がらないのはなぜか?」「業界全体が縮小しているのか、それとも自分がスキルアップ投資をしていないからか?」と、数字を根拠に冷静に分析する癖をつけましょう。

まとめ——「AIが原因」と決めつける前に、数字で判定しよう

今回の「クラウドワークス大幅減益」のニュースは、私たちにメディアリテラシーと数字を読む力の大切さを教えてくれました。表面的な数字のインパクトに引きずられて「AIで仕事がなくなる!」とパニックになる前に、一次資料を確認することで見えてくる真実があります。

今回の減益は“まずコスト要因”が説明できる

改めて結論を整理すると、今回の減益の主因はAIによる仕事の消滅ではなく、会社が成長のために投じた「人件費」と「オフィス移転費」である可能性が極めて高いです。売上高が前年とほぼ変わらないという事実は、仕事の需要そのものが崩壊していないことを示しています。したがって、今すぐに全ての副業がAIに奪われるという極端なシナリオは否定されます。

でも市場変化は進む。副業側は「上流化」と「AI活用」で生き残る

しかし、安心ばかりもしていられません。売上の成長が止まっていることは、これまでの「単純作業のマッチング」というビジネスモデルが限界に来ているサインでもあります。会社がDXコンサルティングへと舵を切ったように、私たち個人も働き方を変えていく必要があります。

ただ作業をこなすだけでなく、クライアントの課題を解決する提案を行う「上流化」、そしてAIを敵と見なすのではなく自分の作業効率を上げるために使いこなす「AI活用」。この二つを実践できる人だけが、単価下落の波に飲まれず、むしろ収入を増やしていくことができるでしょう。

次の決算でチェックするポイントを決めておくと、ブレない

最後に、次の決算発表に向けて自分なりの「観測ポイント」を決めておきましょう。例えば「DX事業の売上がどれくらい伸びているか」や「全体の契約単価が下がっていないか」といった一点だけでも構いません。

漫然とニュースを眺めるのではなく、「自分はこう予想する」という仮説を持って次の発表を待つ。そうすることで、世の中のノイズに惑わされず、自分自身の仕事や生活を守るための正しい判断ができるようになります。変化の激しい時代だからこそ、感情ではなく数字を武器に、賢く生き残っていきましょう。

参考元一覧

クラウドワークス 2026年9月期 第1四半期決算短信(PDF) https://finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp/disclosure/20260213/20260213559329.pdf

クラウドワークス 2026年9月期 第1四半期決算説明資料(PDF) https://assets.minkabu.jp/news/article_media_content/urn%3Anewsml%3Atdnet.info%3A20260213561301/140120260213561301.pdf

吉田浩一郎CEO note(FY26 1Q決算報告) https://note.com/cw_ceo_blog/n/n925c94cf1c87

Yahoo!ファイナンス(3900 適時開示一覧) https://finance.yahoo.co.jp/quote/3900.T/disclosure

株探(決算速報記事) https://kabutan.jp/news/?b=k202602130458

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